ＴＳ５２０Ｘの修理・調整

修理依頼でお預かりしました

オーナー様によると、まったく送受信出来なくなった、との事でした。

初期状態

見た目は大きな傷・凹み等は無い様で、綺麗な状態です。
電源を入れると、全バンド受信しますが超低感度です・・・
ＳＳＧからのアンテナ入力で１００ｄＢｕでＳ６～９程度ふれます。
４０ｄＢｕ入力では、微かにビート音が聞こえる程度で、Ｓメータはピクリとも動かず。
受信できない状態で送信チェックをしても意味が無いので、初期チェックはここまで

内部基板の状態

ケースネジを外してみると・・・
驚きの綺麗さ・・・　部品は経年していますが、とにかく基板やシャーシがキレイ・・・
そして、「Ｄ」仕様となっており、１００Ｗ回路、マーカー基板も装着済み、
追加部品や基板の設置および配線はがっちりとしていて、プロ級処理
もしかしてメーカー対応？　

ＦＩＸ ＣＨ基板（Ｘ４８－１１００－００）
ＡＶＲ回路がありますので、電圧チェックするも、問題無

ＩＦ基板チェック　（Ｘ４８－１０６０－００）
ＲＩＦ端子にＳＳＧから８．７９５ＭＨＺ（７Ｍバンドなら７．１ＭＨＺ）を入力してみると、
普通に感度があります。

ＲＦ基板（Ｘ４４－１０８０－００）のチェック
基板の信号入力端子にＳＳＧから信号を注入してみると、ちゃんと受信します・・・
で、Ｘ-ＶＥＲＴＥＲ ＩＮ端子からのＳＳＧ信号注入でも受信ＯＫです。
この基板自体は大丈夫な様です、さて・・・
アンテナ端子からリレー、入力切替ＳＷまでの経路に断線があるのかなっと。

Ｍ型アンテナ端子
ハンダ不良がありました　（１）

ＨＶ基板（Ｘ４４－１１１０－００）
例によってＲ７でＳＧ電圧を下げ、２８ＭＨＺバンドの出力制限しています（２）

ロータリースイッチ（３）
①ＦＵＮＣＴＩＯＮ ＳＷ
　接触不良を起こしており、マーカーの動作が不安定
②ＢＡＮＤ ＳＷ
　送信時ＲＦ出力がピクピク変動する

ＤＲＩＶＥ
受信最大感度と、送信最大出力とにズレがある（４）
送受切替のたびにＤＲＩＶＥつまみを回して調整していたのでは疲れます。

修理・調整 詳細

（１）Ｍ型アンテナ端子
　　今回の故障の主原因で、Ｍ型コネクタ部分を再ハンダで解決
　　これで送受信が可能となりました。

（２）ＨＶ基板
　　　回路図に書いていない、隠し部品のＲ７です。
　　　ＦＳＢ端子と２１０端子を短い電線で短絡
　　　これで２８ＭＨＺバンドも５０Ｗ以上のＲＦ出力されるようになりました。

（３）その他
　　ロータリーＳＷ等の洗浄
　　接触不良による、諸症状が改善されました。

（４）ＤＲＩＶＥ調整（マニュアル参照）
　　まず、ＤＲＩＶＥつまみを中央にセットし、下記のバンドの順番に調整
　　それぞれのバンドで、
　　ＡＮＴコイル、ＭＩＸコイルでＳメーター最大に調整
　　送信状態にして、ＤＲＩＶＥＲコイルをＲＦ最大出力に調整（注１）

　　　　ＢＡＮＤ　　周波数　　　　　　ＡＮＴコイル　　ＭＩＸコイル　　ＤＲＩＶＥコイル
　①　　３．５　　　３．７５　ＭＨＺ　　　　Ｌ１　　　　　　　Ｌ１　　　　　　Ｌ１
　②　２８．５　　２８．８０　ＭＨＺ　　　　Ｌ５　　　　　　　Ｌ５　　　　　　Ｌ５
　③　２１　　　　２１．２２５ＭＨＺ　　　　Ｌ４　　　　　　　Ｌ４　　　　　　Ｌ４
　④　１４　　　　１４．１７５ＭＨＺ　　　　Ｌ３　　　　　　　Ｌ３　　　　　　Ｌ３
　⑤　　７　　　　　７．１５０ＭＨＺ　　　　Ｌ２　　　　　　　Ｌ２　　　　　　Ｌ２

　ＡＮＴコイルユニット　Ｘ４４－１０９０－００
　ＭＩＸコイルユニット　Ｘ４０－００１８－０１
　ＤＲＩＶＥＲコイルユニット　Ｘ４０－００１７－０１

注１）ＲＦ出力
　　　ＳＧスイッチをＯＦＦにして、ＡＬＣメーターで読み取る

　結果、以上の調整で、設定周波数にて受信最大感度およびドライブ出力最大点が、
　同じ位置となり、最終ＲＦ出力、約９０Ｗ～１１０Ｗを得られています。

まとめ

今回は大きな故障では無く、ハンダ付け不良と言ったパターンでした。
オーナー様の保管あるいは使い方が良かったのか、内部はとてもきれいでしたし、
オリジナルな改造等は無く、マニュアル通りの様な１００Ｗ改造のみでした。
今回は交換部品等は無かったです。
古い機器ですが状態が良く、メンテナンス等で末永く使えそうなリグです。
これにて、オーナー様への御返却と致します。